以前、「飲食店は皿の上で勝負してはいけない」と言う人がいました。
料理のおいしさを追求すれば上には上がいる。それよりおもてなしやスタッフの元気のよさを重視すべきだ。
こうしたアドバイスは受け取り方を間違うとお店づくりを間違える危険性をはらんでいます。
飲食店にとって料理は命、でも、料理にこだわりのない(少ない)お店は少なくありません。
だいたいこれくらいの料理を出しておけばお客さんは入ってくれるだろう
ほかの店だって同じようなものだ
ウチの客単価ならこれくらいのクオリティで満足してくれるはずだ
言葉にすると極端ですがこのような考え方がお皿にあらわれているお店は意外と多いのです。
昨日にひきつづきすかいらーく創業者・横川章(きわむ)さんの言葉を借りると
お弁当ひとつにも経営者の思想があらわれる
といいます。
お皿の上にももちろん経営者の思想があらわれます。
間違えないでください。お金をかけろと言っているのではありません
まったく逆です。
経営を成り立たせるためのかぎられた資源(お金)でお客さんを喜ばせるために、お客さんを驚かせるために、お客さんに幸せになってもらうために、素材えらびにこだわっているか?素材の加工方法は最適か?料理の提供方法に意外性はあるか?ということを考え抜いているかどうかはお皿の上にあらわれるということなのです。
「思想」とは、言い方を変えるとどれだけ料理に誠実に向き合っているか、どれだけお客さまに誠実に向き合っているかということです。
お客さんにその思想が伝わったとき値段以上の価値を感じるのだと思います。
だから単価2万円の料理でも安いと感じるのです。
逆に2千円でも高いと感じることがあるのはこのためです。
ふたたび横川さんいわく、同じ安いでも
味で勝負しているのに安い
に値打ちがあるのです。
経営者の思想が料理にあらわれるお店ならお店は清潔に保たれています。スタッフに活気があります。サービスにも手を抜きません。
というわけで料理が出てくる前に勝負がついているという状況が生まれます。
飲食店の主戦場はあくまでも皿の上であることを忘れてはいけません。