「いつか自分の店を持ちたい」「料理には自信がある」——そんな想いで飲食店の開業を目指す方は多いでしょう。でも多くの店が数年以内に姿を消してしまうのも事実です。夢を形にするには、“味”だけでなく“経営の視点”が欠かせません。
このコラムでは、飲食店経営に必要な考え方やマインドセットについて、開業前にぜひ知っておきたい4つの視点からお伝えします。
① 「美味しい」だけじゃ続かない?経営目線で見る飲食店の成功要因
「味さえよければ人は来る」——これは半分正解で、半分間違いです。
飲食店の成功には、“美味しさ”+“経営感覚”の両輪が欠かせません。
どんなに料理が美味しくても…
・原価率が高すぎて利益が出ない
・回転率や客単価が見合っていない
・サービスや雰囲気に不満でリピーターが定着しない
といった要因で、「味はいいのに赤字」という現象が起きてしまいます。
大切なのは、味を「価値」として“売れる仕組み”を考える視点です。
料理人と経営者、2つの視点を持てる人こそ、長く続く店を作れるのです。
② 飲食店オーナーになる前に考えるべき“ライフプラン”と“経営プラン”
開業はゴールではなく、スタートです。
その後の「人生設計」と「お店の未来」が、現実にリンクしてきます。
たとえば…
・自分や家族の生活費はどれくらい必要?
・お店の利益で将来どう暮らしていきたい?
・子どもがいるなら教育資金や住宅ローンも視野に?
これらを含めたライフプランをもとに、経営目標(売上・利益)を設計すれば、ブレない指針になります。
「自分の人生を守るために経営する」
この発想があるだけで、判断の軸が変わります。
③ 開業前に考えたい「売上」よりも「お金」を残す発想法
飲食店オーナー志望の多くが、最初に目指すのは「月商○○万円」といった“売上目標”。
でも、本当に大事なのは「お金がいくら残るか」です。
同じ100万円の売上でも…
・食材費や酒代が何万円かかるのか
・家賃は坪単価いくらなのか
・何人スタッフが必要なのか
・借入金の返済は月々いくらなのか
などによって、手元に残るお金はまったく違います。
まず考えるべきは、「自分が生活していくには月いくら残したいか?」
そこから逆算して、必要な売上を組み立てる思考を持ちましょう。
「売上より手元に残るお金」この考え方が、継続のカギになります。
④ なぜ多くのお店が3年で消えるのか?飲食店経営のリアル
飲食店の開業後、約3年で7割近くが閉店すると言われています。
その主な理由は、経営の数字が見えないまま始めてしまうからです。
よくある失敗パターン
・毎月の固定費をきちんと把握していない
・売上の波に合わせた資金繰りができない
・仕入れや人件費のコントロールが甘い
飲食業は“感覚”だけでなく、“計画と管理”が成功を左右します。
数字が苦手でも大丈夫です。大切なのは、見ようとする意識と習慣です。
成功している店は、売上よりも「資金残高」を大切にしています。
たとえば…
月の売上が300万円あったとしても、家賃や人件費、仕入れ、借入金の返済などで毎月290万円お金が出ていくようであれば、残るのはたったの10万円。これでは、少しでも売上が落ち込んだときや想定外の出費が発生したときに、すぐに資金が底をついてしまいます。
一方、手元に資金の余裕があるお店は、売上が少し下がっても慌てずに対応できます。季節的な売上の波、機器の故障、スタッフの退職など、飲食業には突発的なトラブルがつきものです。そうしたときに「資金残高」があるかどうかで、持ちこたえられるか、閉店に追い込まれるかが大きく分かれます。
「資金残高=経営の体力」と言えます。銀行口座の残高を定期的にチェックし、「いま何ヵ月分の固定費をまかなえるか?」を把握しておくことが経営の第一歩です。
まとめ:飲食店経営に必要なのは「夢」と「現実」のバランス
飲食店の開業は、「料理への情熱」や「自分の店を持ちたいという夢」が出発点になります。
しかし、それだけでは長く続けることはできません。
経営の現実と向き合い、「数字を見る力」「仕組みを作る力」「将来を見据える視点」が不可欠です。
美味しさは武器になりますが、それを「売れる形」にするのは経営の力です。
そして、開業後も自分や家族の人生を守るために、ライフプランと経営プランを両立させる考え方が大切です。
「売上」ではなく「お金」、「感覚」ではなく「計画」。
この視点を持てるかどうかが、3年後、5年後に生き残れるお店にできるかどうかを分ける分岐点になります。
とはいえ、最初からすべてを一人で完璧にこなす必要はありません。
私たちは、飲食店専門の会計事務所として、数字のこと、計画のこと、融資のことまでしっかりサポートいたします。
あなたの夢が形になるよう、私たちが一緒に伴走しますので、お気軽にご相談ください。
飲食店経営に備えたい方へ
「味には自信があるけど、経営に自信がない」「自分に経営者としての視点が足りるか不安」
そんな方は、どうぞお気軽にご相談ください。
飲食店専門の会計事務所として、あなたの「夢」と「現実」のバランスを支えるサポートをいたします。