【リアルタイム経営診断シリーズVol.2】
原価率を下げたい!でも、値上げで客離れが起きるのが怖い
飲食店経営において「原価率を下げたいけれど、値上げをするとお客様が離れてしまうのでは…」と悩むオーナーは少なくありません。物価上昇が続く今、利益を確保するためには数字だけでなく現場感覚に基づいた工夫が欠かせません。
今回のリアルタイム経営診断シリーズでは、実際の焼鳥店オーナーとの対話をもとに、仕入れルートの見直し、食材ロスの削減、高粗利商品の活用、そして伝え方に配慮した値上げ戦略など、具体的な改善方法を整理しました。数字を味方につけ、無理なく経営を改善するためのヒントをお伝えします。
※この記事は実際の飲食店オーナーとの対話をもとに再構成しています。個人情報保護のため内容は一部編集しています。
登場人物紹介

個人経営の焼鳥店「たけだ屋」オーナー。開業4年目、物価上昇に悩む日々。

プロアクション会計事務所の飲食店専門税理士。これまでの500店超の飲食店の支援実績があり、数字と現場感覚のギャップを埋めることを得意とする。
よくある悩み:「減価率を下げたい(値上げしたい)けど客離れが起きないか心配」
■ スタートは、こんな一言から

「先生、最近食材や酒の仕入代が上がってて…でも常連さんに悪くて、値上げには二の足を踏んでます」

「飲食店の多くが同じ悩みを抱えています。大事なのは“ただ値上げする”のではなく、“戦略的に原価率を下げる”という視点です」
アプローチ1:仕入れルートを見直す

「まず仕入先ですが、複数比較していますか?」

「いや…昔から付き合いのある業者さん一本です」

「長年の取引先があっても価格交渉は必要です。あらためて相見積もりを取ってみると、いまの相場感がわかりますよ。業務用スーパーや市場での直接仕入れも検討してみてください。
現在の売上が月平均で420万円なので、12.5万円程度仕入額を減らすと、原価率を約3%下げることができます」

「うちでよく出る“ねぎま”のねぎ、業者仕入れと地元八百屋で40円/束の差があったんです。それだけでも月に数千円変わりそうですね。できるところから見直そうと思います」

「ほかにも人気メニューに注文が集中すれば、特定の食材の仕入れロットを増やすことができます。ロット調整によっても仕入額を減らせる可能性がありますよ」
アプローチ2:食材ロスの可視化

「次に、毎日の“まかない”や“廃棄ロス”は把握していますか?」

「そこまでは…正直、記録してません」

「食材ロスは見えないコストです。たとえば、1日2,000円分のロスが月で6万円、年で72万円。これは思いのほか原価率を悪化させる要因になります。まずはロスの記録から始めましょう」

「そういえば冷凍庫の奥に余った食材が溜まってたな。古くなる前に売らないともったいないですよね」

「食材や飲料の在庫管理はとても大切です。あまり楽しい話ではありませんが、従業員が無断で持ち帰ったり、勝手に飲んだり食べたりして消費してしまっていたという事例もあります。毎月末にざっくりした計算でいいので在庫の確認をするようにしてください」
アプローチ3:利益率の高い商品を組み合わせる

「焼鳥以外のメニューで粗利が高い商品はありますか?」

「副菜とかドリンクですかね。でも正直、あまり推してないです」

「そこにチャンスがあるかもしれません。メニューの主力である焼鳥の原価率は一般的に30%程度と、極端に高いわけではありません。ただし仕入れ価格の変動はありますし、たけだ屋さんは串打ちもご自身でされているのでかなり手間がかかっています。売れ筋であっても利益面で過信は禁物です。それに対して、副菜やドリンクによっては原価が低く、利益率が高い構造になっていることが多いです」

「たしかに、仕込みには手間がかかりますね。でも、あんまり粗利のことは意識してきませんでした。冷やしトマトとかポテサラは仕込みも簡単でよく出ます。でも単価が安いし、目立たないんですよね」

「では高粗利メニューを焼鳥と組み合わせたメニューなどを検討されてはいかがでしょうか。たとえば、原価率10%以下の副菜を“セット”にすることで、全体の粗利率を引き上げられるかもしれません」
実践アイデア
セット販売で単価アップ&原価率ダウン
・「焼鳥5本セット+副菜+ドリンク=1,500円」など、構成を工夫して客単価と粗利を同時に上げる。
・単品合計より100円程度安く見せるだけで、注文率が上がります。
“おすすめメニュー”の見せ方を工夫
・原価率10%以下の副菜を「本日のおすすめ」や「小鉢盛り」で主役級に。
・POPやスタッフの声がけで自然に注文を促す。
季節メニューで価格の自由度を活かす
・季節感のある素材を使い「旬の一品」や「季節の日本酒セット」に。
・価格設定も自由度が高く、心理的に“特別感”を出せるので値上げへの抵抗も少なくなります。
デザートや〆メニューの強化
・小さなパフェや鶏スープ茶漬けなど、締めに利益率の高い一品を提案。
・満足感を演出しつつ、客単価も向上。

「なるほど、セットにして価値を高めれば、価格じゃなくて内容で選ばれるんですね」

「お客様にとって“お値打ち感”があれば、注文単価は上がっても納得してもらえる可能性が高いと思いますよ」
アプローチ4:値上げを“伝え方”で成功させる

「でも、やっぱり値上げって怖いです」

「その不安、よく分かります。でも今のように食材やエネルギー価格が上昇し続けている状況では、むしろ“何も変えないこと”のほうがリスクになってしまいます」

「たしかに、仕入れは上がってるのに値段据え置きだと、どんどん利益が削られますよね…」

「そうなんです。ですので、ポイントは“値上げの仕方”と“お客様への伝え方”です。たとえば──」
値上げを成功させる3つの工夫

「ひとつ目は、『価格改定の理由をきちんと伝える』ことです。原価の高騰や円安の影響で仕入れが上がっていること、品質を落とさずに提供し続けるための選択であることを、正直にお伝えしてみてはいかがでしょうか」

「なるほど、“ただ高くなった”じゃなくて、“品質のため”って伝えれば印象が違いそうですね」

「そうですね。二つ目は、『人気メニューは据え置きにする』です。たとえば“ねぎま”や“つくね”のような看板商品はそのままにして、サイドメニューやドリンクで価格調整を図る方法です」

「確かに、常連さんが頼むいつもの串の価格が急に上がったら驚きますよね」

「だからそこは手をつけずに、季節限定の串や新メニュー、ドリンクなどから価格を見直す。これが三つ目のポイントです。『新商品や限定メニューから価格改定を始める』という方法です。お客様にとって“新しいもの”は価格に対する基準がないので、比較的受け入れられやすいと思います」

「新しいクラフト酒の導入を考えていたので、それに合わせて価格設定を変えるのはいいかもしれません」

「まさに、それが戦略的な価格改定ですね。価格を上げること自体が目的ではなく、“お店を継続し、質を守るため”の行動として、お客様に伝えることが大切です」
まとめ
“原価率を下げる”ための工夫には、次の4つの視点が有効です。
- 仕入れの見直し
- 食材ロスの削減
- 高粗利商品の活用とセット販売
- 顧客への配慮ある戦略的な値上げ
特に「値上げ」は敬遠されがちですが、適切なタイミングと伝え方を工夫すれば、顧客離れを最小限にしつつ利益改善につなげられます。
次回は「人件費の最適化」をテーマに、シフト管理や生産性向上の具体策をお届けします。どうぞお楽しみに。
値上げや原価改善に悩む方へ
「原価率を下げたいけれど、どう動けばいいのかわからない」「価格改定の伝え方に悩んでいる」
そんな方は、ぜひ一度ご相談ください。
私たちは、飲食店の現場感と数字の両面から、利益を守るための改善提案とサポートを行っています。