飲食店の開業融資を検討するとき、次のような疑問や不安を抱える方は少なくありません。

「銀行と日本政策金融公庫、どちらに相談すればいいの?」

「審査や金利の違いが分からず、開業日に間に合うか不安……」
創業融資は、窓口によって仕組み、審査の進み方、保証料の有無、開業後の金融機関との付き合い方が異なります。金利だけを比べて決めると、希望する開業日に間に合わない、必要額を調達できない、開業後の追加融資につながらないといった問題が起こります。
この記事では、飲食店の融資における銀行と日本政策金融公庫の違い、向いているケース、審査で見られるポイント、実務的な選び方を解説します。
当事務所では、これまで500件以上の飲食店支援を行ってきました。創業融資支援では、融資審査通過率100%、満額融資率98%の実績があります。資金調達だけでなく、事業計画書の作成、開業後の税務顧問、資金繰り、経営改善まで支援してきた実務経験をもとにお伝えします。
結論:開業前は日本政策金融公庫を軸に、銀行との関係も早めに作る
初めて飲食店を開業する方は、日本政策金融公庫を軸に検討するのが基本です。ただし、銀行か日本政策金融公庫かを必ず一つに決める必要はありません。
日本政策金融公庫は、営業実績がない創業前・創業直後の事業者への融資に積極的な政策金融機関です。一方、銀行や信用金庫などの民間金融機関は、地域で事業を続けるうえで長く付き合う資金調達先になります。開業後の運転資金、設備の入れ替え、2店舗目の出店まで考えると、早い段階から取引実績を作る意味があります。
大事なのは、制度名だけで選ばないことです。必要額、自己資金、開業予定日、飲食業経験、返済計画を整理し、単独融資だけでなく協調融資も含めて組み立てます。日本政策金融公庫も民間金融機関との協調融資を進めており、両方を組み合わせる選択肢があります。
銀行と日本政策金融公庫の違い
銀行と日本政策金融公庫の違いは、単に「民間か公的機関か」ではありません。創業者への向き合い方、審査体制、費用、開業後の関係に違いがあります。
日本政策金融公庫は創業期の資金調達に強い
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方を対象とし、設備資金と運転資金に利用できます。融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内、運転資金10年以内です。実際の融資額や返済期間は、必要資金と返済可能性を審査したうえで決まります。
創業前は決算書がありません。そのため、審査では自己資金を準備してきた履歴、飲食業での経験、見積書、事業計画書、面談内容が重く見られます。料理への熱意だけでは足りません。客単価、客数、回転率、営業日数から売上を作り、原価、人件費、家賃、返済を差し引いても資金が残る根拠が必要です。
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銀行の創業融資は信用保証協会付きが中心になる
創業前や実績の少ない事業者が銀行・信用金庫から借りる場合、信用保証協会の保証が付く融資を提案されることが多くあります。信用保証協会が公的な保証人となることで、金融機関が創業者へ融資しやすくする仕組みです。
全国信用保証協会連合会の「初めての融資と信用保証」でも、金融機関との取引が浅い中小企業・小規模事業者では信用保証協会の保証を求められることがあると案内されています。保証付き融資では、借入金利とは別に信用保証料がかかります。また、金融機関と信用保証協会の双方で確認が進むため、申込みから実行まで余裕を持つ必要があります。
銀行がすべて同じ条件というわけではありません。都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合では、対象地域、創業支援の体制、融資商品が異なります。自治体の制度融資を使う場合は、自治体、金融機関、信用保証協会が関わることもあります。
違いを比較表で確認する
| 比較項目 | 日本政策金融公庫 | 銀行・信用金庫 |
|---|---|---|
| 主な特徴 | 創業期の事業者への融資に積極的 | 地域で継続的な取引関係を作りやすい |
| 創業時の主な審査 | 公庫が審査 | 保証付き融資では金融機関と信用保証協会が確認 |
| 保証料 | 信用保証協会の保証料は不要 | 保証付き融資では信用保証料が必要 |
| 重視される資料 | 自己資金の履歴、経験、創業計画、見積書、面談 | 同左に加え、地域性や金融機関との取引状況も確認 |
| 開業後の関係 | 追加融資や経営支援の相談が可能 | 入出金、口座振替、追加融資など日常取引へつながる |
| 向いている場面 | 初めての開業、創業前、実績が少ない段階 | 地域での長期経営、将来の追加調達、制度融資の活用 |
表は一般的な整理です。金利、保証、担保、返済期間、必要書類は、申込者と制度によって変わります。表だけで有利・不利を決めず、自店の条件で確認してください。
日本政策金融公庫が向いている飲食店
次に当てはまる方は、日本政策金融公庫を優先して検討しやすいです。
- 初めて飲食店を開業する
- 創業前で決算書がない
- 内装・厨房機器などの設備資金と運転資金をまとめて調達したい
- 保証協会の保証料を含めた総コストを比較したい
- 飲食業経験と事業計画をもとに審査を受けたい
「公庫なら創業者でも簡単に借りられる」という意味ではありません。次のような計画では説得力が足りません。
- 自己資金がどこから出たのか説明できない
- 見積額と申込額が合っていない
- 売上予測が満席前提になっている
- 開業後の運転資金がほとんど残らない
特に飲食店は、物件取得費、内装工事、厨房機器へ資金が偏りがちです。オープンした瞬間から家賃、人件費、仕入れ、水道光熱費、広告費、返済が発生します。最低3カ月、できれば半年は赤字でも耐えられる資金設計が必要です。
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銀行・信用金庫が向いている飲食店
銀行や信用金庫が向いているのは、今回の開業資金だけでなく、地域で長く事業を続けるための金融機関との関係を作りたい方です。
- 開業予定地の地域金融機関と取引を始めたい
- 自治体の制度融資を検討している
- 売上入金や家賃・給与の支払い口座をまとめたい
- 開業後の設備更新や2店舗目の出店も見据えている
- 公庫との協調融資で必要額を組み立てたい
飲食店経営では、開業後にも資金需要が発生します。厨房設備の故障、空調の交換、求人費の増加、繁忙期前の仕入れ、改装、2店舗目の保証金などです。日頃から入出金の流れを見てもらい、数字を説明できる関係を作っておくと、追加資金が必要になったときに相談を始めやすくなります。
一方で、口座を作っただけでは融資実績にはなりません。試算表を定期的に作り、売上、原価率、人件費率、資金残高、納税予定を把握し、経営者自身が説明できる状態が必要です。
どちらに申し込んでも見られる5つの審査ポイント
融資先が違っても、金融機関が見ている本質は同じです。借りたお金を、事業から生まれる資金で返せるかを確認します。
1. 自己資金の金額と準備の履歴
自己資金は残高だけでなく、どのように貯めてきたかを見られます。毎月の給与から積み立てた履歴があれば、開業準備の継続性を説明できます。申込直前に入った大きなお金は、出所を説明できなければ見せ金を疑われます。通帳の履歴を見られても説明できる状態にしてください。
2. 飲食業経験の再現性
飲食業経験は「何年働いたか」だけでは足りません。調理や接客に加えて、店長として売上を管理したか、原価や廃棄を見たか、仕入先と交渉したか、シフトを組んだか、採用や教育を担当したかまで整理します。開業後に同じ運営を再現できる根拠が必要です。
3. 必要資金と見積書の整合性
設備資金は、内装工事、厨房機器、什器、看板、POSレジなどの見積書と一致させます。「予備費として多めに借りたい」だけでは通りません。反対に、見積もりにない工事や備品が後から増えると、開業前に資金が足りなくなります。物件契約前から必要項目を洗い出すことが重要です。
4. 売上・利益・返済の根拠
売上予測は、客単価×客数×営業日数に分解します。ランチとディナー、平日と週末で分け、席数と営業時間から実現できる回転率かを確認します。そのうえで原価、人件費、家賃、水道光熱費、広告費、借入返済、税金、生活費まで差し引きます。
売上があることと、お金が残ることは別です。借入金の元金返済は経費にならないため、損益計算上は黒字でも預金残高が減ることがあります。事業計画書では、利益だけでなく返済後の資金繰りまで確認してください。
5. 開業までのスケジュール
融資実行前に内装工事や高額設備を発注し、手付金を払いすぎると、審査結果が出る前に資金繰りが詰まります。物件、融資申込、保健所への事前相談、工事、営業許可、採用、研修、オープン準備の順番を組みます。希望日から逆算し、審査が長引く場合の予備日も入れてください。
「銀行か公庫か」だけで決めると失敗しやすい理由
創業融資の相談で多い失敗は、金利の低さだけで借入先を決めることです。金利は重要ですが、飲食店の開業では次の点も同じくらい重要です。
- 必要額を満たせるか
- 開業予定日に間に合うか
- 設備資金と運転資金を適切に分けられるか
- 保証料を含めた総負担はいくらか
- 据置期間中と返済開始後の資金繰りはどうなるか
- 開業後の追加資金へつながるか
たとえば、内装費800万円、物件取得費200万円、厨房機器300万円、運転資金500万円で、合計1,800万円が必要な計画を考えます。自己資金が300万円なら、必要な借入額は1,500万円です。このとき一つの金融機関だけに相談し、希望額に届かなければ、工事内容を変えるか、運転資金を削ることになります。
運転資金を削って開業日だけを優先するのは危険です。借入金は酸素ボンベのようなものです。資金が尽きる前に売上を安定させ、返済しながらお金が残る状態まで持っていく必要があります。
また、同時に複数へ申し込めばよいという話でもありません。申込額や資金使途の説明が窓口ごとに食い違うと、計画の信頼性を損ないます。協調融資を使う場合は、どの費用をどちらが負担するのか、申込先へ正直に伝えて全体を整えます。日本政策金融公庫の「民間金融機関との連携の取り組みについて」でも、公庫と民間金融機関の商品を組み合わせた協調融資が案内されています。
飲食店の開業融資を選ぶ実務的な手順
必要資金を初期費用と運転資金に分ける
まず、物件取得費、内装、厨房機器など開業前に使う初期費用と、開業後に使う運転資金を分けます。運転資金には、家賃、人件費、仕入れ、水道光熱費、広告費、借入返済、税金、経営者の生活費まで入れます。
自己資金と借入可能額の差を確認する
必要資金から自己資金を引けば、希望借入額が出ます。ただし、その金額を借りられることと、返せることは別です。返済期間と金利を仮置きし、毎月返済後にも税金と生活費を残せるかを確認します。厳しければ、物件、工事、設備、開業時期を見直します。
公庫・地域金融機関・制度融資を同じ条件で比べる
比較するときは、金利だけでなく、保証料、融資額、返済期間、据置期間、担保・保証、実行時期、必要書類を一つの表にします。条件が違うものを金利だけで比較しても、正しい判断はできません。
申込前に事業計画書と面談回答を一致させる
事業計画書に書いたコンセプト、経験、客単価、客数、原価率、必要資金は、面談で自分の言葉で説明できなければなりません。「専門家に作ってもらったので分かりません」では通用しません。計画書を作る目的は、きれいな書類を提出することではなく、経営者が自店の数字を理解することです。
当事務所の事業計画書作成支援では、申込書を埋めるだけでなく、客単価、席数、回転率、営業日数、原価率、人件費、家賃、返済後の資金まで何度も行き来しながら、開業後に続けられるラインを探します。飲食店に特化しているため、業態ごとの原価構造や人員配置を踏まえて数字を確認できます。
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銀行と日本政策金融公庫に関するよくある質問
日本政策金融公庫と銀行へ同時に相談できますか?
相談できます。必要額が大きい場合は、協調融資で公庫と民間金融機関が分担することもあります。ただし、他の申込先、希望額、資金使途を隠してはいけません。総額が必要資金を超えていないか、同じ請求書を重複して設備資金に使っていないかを整理します。
銀行ならメガバンクと信用金庫のどちらがよいですか?
小規模な飲食店の創業では、開業地域の地方銀行、信用金庫、信用組合が相談先になりやすいです。ただし、各金融機関で営業地域と創業支援の方針が異なります。店舗予定地を伝え、利用できる保証制度や自治体の制度融資があるか確認してください。
信用保証協会が代わりに返済すれば、借入金は返さなくてよいですか?
返済義務はなくなりません。信用保証協会が金融機関へ代位弁済した後は、信用保証協会へ返済します。保証付きだから返済リスクがないわけではありません。借りられる金額ではなく、返せる金額で計画してください。
まとめ:銀行と公庫の選択は開業後の資金繰りまで見て決める
初めて飲食店を開業する方は、日本政策金融公庫を軸に検討するのが基本です。一方、銀行や信用金庫との取引は、開業後の運転資金、設備更新、2店舗目の出店など、長期的な経営を支えます。必要額によっては、どちらか一方ではなく協調融資も選択肢になります。
飲食店の創業融資で大事なのは、どこなら借りやすいかだけではありません。自己資金、経験、必要資金、売上根拠、返済後の資金繰りを一つの計画として整えることです。融資を受けることがゴールではありません。開業後に返済を続けながら、店にお金を残すことがゴールです。
当事務所は、500件以上の飲食店支援で培った実務知見をもとに、創業融資、事業計画書作成、資金調達、税務顧問、経営改善までワンストップで支援しています。創業融資支援では、融資審査通過率100%、満額融資率98%の実績があります。飲食店特有の原価率、人件費、家賃、開業後の運転資金まで確認できるため、「借りられる計画」ではなく「返済しながら続けられる計画」を作れます。
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