
「売上は順調に伸びているのに、なぜか手元にお金が残らない…」
そんな悩みを抱える飲食店オーナーは少なくありません。本記事では、実際の相談事例をもとに、数字を見ながら資金繰りを改善する具体的な方法を紹介します。
※この記事は実際の飲食店オーナーとの対話をもとに再構成しています。個人情報保護のため内容は一部編集しています。
■ 登場人物紹介
- 竹田さん(仮名):個人経営の焼鳥店「たけだ屋」オーナー。開業4年目、売上は好調だが資金繰りに悩み中。
- 筆者(税理士):飲食店専門税理士。数字と現場感覚のギャップを埋めることを得意とする。
よくある悩み:「売上はあるのにお金がない」
■ スタートは、こんな一言から

「先生、売上は上がってるんですよ。でも…手元に全然お金が残らなくて」

「なるほど。それはよくいただく相談です。まず最近3ヵ月の試算表と入出金記録を見てみましょう」
まずは現状を数字で“見える化”する
■ 数字を見てみると…
- 月商(直近3ヵ月平均):420万円
- 食材費:160万円(原価率38%)
- 固定費:245万円
うち人件費:120万円
家賃:50万円
減価償却費:5万円
- 営業利益:15万円
- 借入返済(元本):20万円

「たしかに黒字ですが、営業利益が月15万円、営業利益率3.5%とやや少なめですね。飲食店の平均的な営業利益率は8.6%と言われています」

「そうなんです。少し利益は出ているけど、口座残高がどんどん減っていって…」

「利益率についてですが、個人店の場合は、まず5%を第一段階の目標にしてみてください。竹田さんのお店だと21万円程度になりますね。キャッシュが流出しない経費である減価償却費5万円を足し戻した合計額26万円から借入金の元本返済することになりますから、26万円-20万円=6万円手元に残る計算です」

「そうですね。でも、もう少し手元に残らないと生活できません」

「近いうちに老朽化した厨房機器やエアコンの買い替えの必要も出てくるかもしれません。急な出費に備える意味でも月々10万円程度は手元に残したいですね」
理想は「毎月10万円を手元に残す」こと

「では月々10万円手元に残すためにはいくら売上が必要か、ということから見ていきましょう」
【計算の基本になる金額】
固定費245万円-減価償却費5万円+借入返済(元本)20万円+目標手残り額10万円=270万円
【必要な売上】
270万円÷粗利率62%(=100%-原価率38%)= 約435万円
「つまり、今より月商を15万円増やし、435万円を確保できれば、毎月10万円が手元に残る計算になります」

「なるほど…でも、売上をすぐに増やすのって簡単じゃないですよね」

「その通りです。ですので売上を上げると同時に、他に利益率を改善できる方法がないか考えてみましょう」
売上アップだけが正解ではない
【ケース1:原価率を3%改善できた場合(38%→35%)】
必要な売上: 270万円÷65%(=100%-35%)=約415万円
【ケース2:人件費を5万円削減できた場合(120万円→115万円)】
必要な売上:265万円(=270万円-5万円)÷ 62%=約427万円
【ケース3:原価率3%改善+人件費5万円削減】
必要な売上:265万円÷65%=約407万円

「つまり、現在の420万円という売上を維持しながら、原価率を3%下げて、人件費を5万円減らすことができれば、手元に残るお金は13万円も増えるんです!」

「おお…! 売上を上げるだけじゃなくて、使い方も見直せばいいんですね」
まとめ|黒字経営=健全経営ではない
今回は、日々の営業に追われながらも、一歩立ち止まって数字を見直した竹田さんの例をご紹介しました。
「黒字だから大丈夫」と思い込むのは危険です。
経営において大切なのは、利益が出ていることではなく、お金が残る体質になっていること。そのためには、売上だけでなく支出にも目を向けることが必要不可欠です。
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プロアクション会計事務所は、飲食店専門の税理士として、開業から資金繰り、数字の改善までトータルで支援しています。
「売上があるのにお金が残らない」「もっと経営の数字を活かしたい」そんなお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。