【リアルタイム経営診断シリーズVol.3】
人件費120万円の壁…まずは月5万円、削るには?
飲食店経営において、人件費は大きな固定費のひとつです。「削りたいけれど、どうやって?」と悩むオーナーも多いのではないでしょうか。今回のリアルタイム経営診断シリーズでは、焼鳥店オーナーとの実際の対話をもとに、人件費を“月5万円”削減するための具体的な方法を整理しました。
シフト調整や短時間勤務の活用、スタッフの役割見直しなど、すぐに取り入れられる工夫をご紹介します。数字の裏付けと現場目線の両方から、経営改善のヒントを掴んでください。
※この記事は実際の飲食店オーナーとの対話をもとに再構成しています。個人情報保護のため内容は一部編集しています。
登場人物紹介

個人経営の焼鳥店「たけだ屋」オーナー。開業4年目、物価上昇に悩む日々。

プロアクション会計事務所の飲食店専門税理士。これまでの500店超の飲食店の支援実績があり、数字と現場感覚のギャップを埋めることを得意とする。
よくある悩み:「人件費の無駄を無くしたいけどやり方がわからない」
■ スタートは、こんな一言から

「先生、前に“人件費を5万円削るだけで、必要売上が8万円以上下がる”って話、ありましたよね」

「はい。現在の原価率が38%なので、5万円経費を削減すると、5万円÷粗利率62%(=100%-原価率38%)=8万円手元に残るお金が増えるという計算でしたね」

「でも実際に人件費を減らすって、すごく難しくて…」

「では今回は、月5万円という削減目標を“現実的に”どう達成するか、具体的に考えてみましょう。きっとすぐ手を付けられそうな取り組みがあると思いますよ」
アプローチ1:曜日別・時間帯別に“過剰”を見直す

「まずは、シフトの“無意識な余剰”を見つけましょう」
【前提条件】
店休日:月曜日
営業時間:ランチタイム 11時~15時、ディナータイム17時~23時
削減案1:1名あたり1日30分短縮(週3回実施)
- 対象:ランチまたはディナーに入るスタッフ2名のうち1名を、早上がりまたは遅入りで対応
- 削減時間:0.5時間/回 × 週3回=1.5時間/週
- 削減額:1.5時間 × 1,200円=1,800円/週 → 月4週で7,200円/月
削減案2:閑散曜日(例:火曜 or 水曜)に1名減員
- 想定:ディナータイム6時間(17:00〜23:00)を1名分削減
- 削減額:6時間 × 1,200円=7,200円/回 → 月4回で28,800円/月
削減案3:仕込み時間の圧縮(開店前30分短縮)
- 対象:ディナーの仕込み担当2名を30分遅入りに変更(火~金)
- 削減時間:0.5時間 × 2名 × 4日間/週=4時間/週
- 削減額:4時間 × 1,200円=4,800円/週 → 月4週で19,200円/月
【合計削減効果】
削減案1:7,200円/月
削減案2:28,800円/月
削減案3:19,200円/月
▶ 合計:55,200円/月の人件費削減

「たしかに、火曜と水曜の夜は少し余裕あるなと感じてました。30分~1時間でもこまめに調整すれば、けっこう効くんですね」
アプローチ2:短時間シフトで“必要なときだけ働く体制”へ

「ピーク時間にだけ手が足りないなら、2~3時間の“スポット勤務”を活用する方法もあります。上手に使えば人件費の変動費化につながり、柔軟性を高められる可能性もありますよ」
スポットマッチングサービス(例:タイミー)の活用ポイント
メリット | 内容 |
即日手配 | 必要な時間帯だけ、1名単位で募集が可能。人手が急に足りない日に便利。 |
採用不要 | 面接・教育コストをかけず、即稼働できるスタッフが確保できる。 |
業務範囲の指定可 | 「洗い場のみ」「配膳補助のみ」など、業務を限定した募集が可能。 |
注意点・リスク
デメリット | 内容 |
時給が高め | 地域・時間帯によるが、相場より100〜200円高い(例:1,400円〜1,500円程度)。 |
スキルのばらつき | 来る人の経験値に差があり、“毎回同じクオリティ”は期待しづらい。 |
定着しない | 1日限りの勤務が多いため、教育効果や関係性の積み重ねが難しい。 |

「上記のとおり、スポットマッチングサービスは便利な反面デメリットもあります。まずは“緊急対応”や“土日の補強”など、限定的な用途から始めてみてはいかがでしょうか。
一方で、固定のスポット勤務のスタッフ(例:夕方2時間だけの主婦層・学生)を育成するという考え方もあります」
スポット勤務のスタッフ育成ポイント
- 対象層:主婦(保育時間内の就労)、大学生(授業の合間)、副業者(Wワーク)など
- 想定時間:
・ランチタイム:11:30〜14:00(2.5時間)
・ディナータイム:18:00〜21:00(3時間) - 想定頻度:週2〜3日、1日2〜3時間
- 時給相場:1,200〜1,300円(業務範囲を限定することで、やや抑えめの設定でも応募がある場合も)
業務を限定した具体的な役割例
業務範囲 | 内容 | 期待される効果 |
配膳・下げもの | 注文品の提供、食器の回収 | 接客フロアの回転効率UP |
洗い場 | 食器洗い、キッチン補助 | 調理担当の集中力確保 |
ドリンク担当 | ドリンク作成、提供 | 調理・ホールの負担軽減 |
テーブル清掃 | セット・片付け | 回転率向上と衛生管理 |
開店準備 | 箸・おしぼりのセット、掃除 | フルタイムスタッフの負担軽減 |
導入時の注意点
- 業務内容を明確にすること
→ 勤務時間が短いほど、“何をすべきか”を明示しないと混乱や教育ロスが増えます。 - 最初から高スキルを求めすぎないこと
→ 慣れるまでは「補助的業務」に留め、継続的な戦力化を目指します。 - 人員の“すき間”に入れて無理なく配置
→ 既存スタッフと重複しすぎると人件費の無駄が生まれるため、あくまで“ピーク限定”で活用。 - 早期離職のリスクも考慮
→ シフト表の柔軟さや指導体制を整えて、働きやすさと定着率を両立させます。

「たしかに、“フルシフトじゃなくても戦力になる業務”ってけっこうありますね。洗い場とドリンク係だけでも分担できれば、だいぶ助かりそうです」

「短時間勤務の方が“できること”を明確にしておけば、即戦力になりやすく、教育の手間も最小限で済みます。スタッフ構成の幅が広がることで、シフトの柔軟性も高まりますよ」

「『夕方2時間だけ入ってくれる人』がいれば、かなり助かります!」
アプローチ3:一人ひとりの“役割と効率”を再点検

「最後に、“今いる人の働き方そのもの”を見直すことで、人件費を増やさずに生産性を上げる工夫ができます」
・洗い場・ホール・調理補助の“担当重複”を明確化
・トレー活用、配膳導線の短縮などで1人当たりの処理量アップ
・非ピーク帯は“兼任・兼務”で人数を圧縮

「“動線”と“同時にできる仕事”を見直すだけで、1人で2役分こなせるケースは多いですよ」
導線を短縮する工夫
・トレーの活用:一度に2~3卓分の配膳・下げ物をまとめて動く
・サーバースペースの整理:ドリンク、カトラリー、伝票を1箇所にまとめて“1往復で完結”
ランチタイムは「効率=売上」に直結

「ランチタイムは回転数が命です。たとえば、1卓の滞在時間を5分短縮できれば、全体で1回転増やせる可能性があります」
- 席数:20席(5卓×4人掛け)
- 通常回転数:1.5回転 → 30人
- 5分短縮して2回転:最大40人(+10人)
→ 客単価1,000円として+10,000円/日、月20営業日で20万円の売上増

「ランチって利益率はそこまででもないけど、固定費をカバーする意味では、回転数は重要ですね」

「はい。だからこそ、1人ができる業務を整理し、“無駄なく、重複なく”配置するだけで、ランチの生産性が大きく変わります」
まとめ
月5万円の人件費削減は、極端な人員カットではなく、日々の“小さな工夫”の積み重ねで十分に達成可能です。
- 繁閑に応じた柔軟なシフト設計
- スポット人材の活用
- 一人ひとりの働き方の見直し
「働き方の最適化」は、コスト削減だけでなく、現場の満足度向上や定着率アップにもつながる可能性がありますよ。
次回は「DXを活用した業務効率化と顧客満足の向上」をテーマに、個人店でもすぐできるIT化についてお伝えします。どうぞお楽しみに。
人件費に悩んでいる方へ
「できるだけ人を減らさずにコストを抑えたい」「今の働き方を変えずに利益を出したい」
そんな方は、ぜひ一度ご相談ください。現場のリアルに即した人件費改善の提案を、数字と仕組みの両面からサポートいたします。